熱帯林を未来に残すためにできることは何だろう?

知らず知らずのうちに熱帯林を壊してしまっていたら悲しい。そうならないために私たちが知るべきこと。

2019.01.31 伊藤 聡士(すっぴー)

伊藤 聡士(すっぴー)

熱帯林は私たちの生命線

香ばしい腐葉土の匂いがあたり一面に広がる森。しとしと降る雨が木々の葉にぽつりぽつりと当たり、耳に心地良く響く。上から鳥たちの合唱が大音量で聴こえ、下は虫の鳴き声で溢れている。森に入ると生命の溢れるパワーに圧倒され、とても満たされた気分になる。

日本の森はとても豊かで、多くの生物と人々の生活を長いこと支えてきました。そんな森が無くなってしまうのは耐えられないほど悲しいです。運よく日本では今でもたくさんの森が残っています。一方で残念なことに、同じように豊かな熱帯林は、次々と失われています。

熱帯林と日本の暮らしが結びつかないかもしれません。けれど遠い世界の話ではないんです。

例えば私たちの健康を支える薬の原料がたくさん採れます。西洋薬の実に25%が熱帯林の植物由来のものです。スターアニスはインフルエンザの特効薬タミフルになります。すべての抗がん剤の3分の2が熱帯林で採れるといわれています。マダガスカル島で採れたニチニチソウから合成された抗がん剤は、白血病の子供たちの生存率を劇的に高めました。

今までに、たくさんの医薬品ができていますが、薬になるかのテストをされたのは熱帯林の植物全体の1%にもなりません。

今ではマダガスカル島のニチニチソウは絶滅しているようです。ヒトの命を助ける薬になるはずだった生物資源が、知らず知らずのうちに絶滅しています。

熱帯林には生物の50%以上が生きていて、気候変動を止め 2 、地球上の生物多様性を維持するためにとても重要な場所です。

どのような場所なのかは以前の記事「生命の溢れる熱帯林ってどんな場所?」で書いていますので、ぜひチェックしてみてください。

熱帯林の減少は待ったなしの状況で、すぐにでも行動しないといけないことは知っていました。しかし、具体的に何をしたらいいかわかっていませんでした。

なので今回は、

・熱帯林が貴重なことは知っているけど、どのくらい危機的な状況にあるの?

・守るために何をしたらいいの?

という問いを考えたいと思います。

熱帯林の減少

熱帯林は人間の活動により減少してきました。

毎年約1500万ヘクタール(北海道約2つ分)が失われていて、そんな熱帯林の減少と並ぶように、地球全体では絶滅が猛スピードで進んでいます。毎日100種以上の動植物が絶滅しており、あと40年で地球上の種の4分の1が絶滅する速さです。

熱帯林伐採は、気候変動の原因となるCO2排出の大きな要因です。木として固定されていた炭素が伐採され使われるとCO2になるからです。調査によると、熱帯林伐採は毎年、世界のCO2排出量全体の最大15%を占めています。これは、地球上のすべての自動車、トラック、バス、飛行機、船、列車の合計のCO2排出量とほぼ同じです。熱帯林はこの瞬間にも失われています。

2000~2005年までの森林の増減。熱帯林のほとんどが赤色で、減少しているのがわかる。(IPCC AR4 より)

例えば、オランウータンの住む東南アジアのボルネオ島はこの50年で熱帯林の大半を失いました。我々人間は手つかずの熱帯林2700万ヘクタールを切り開き、アブラヤシという一種の特定の木を大規模栽培しています。アブラヤシからとれるパーム油がとてもお金になるからです。オランウータンは追い詰められ、毎週100頭もの命が亡くなっています。

オランウータンは、健康であれば50年ほど生きます。ヒトに次いで長い時間を育児に費やし、子供が独立する9年もの間たっぷりの愛情をかけて育てあげます。私たちの贅沢のために、彼らを犠牲にするのは誤った選択としか思えません。

彼らが住むのは世界最古の熱帯林であり、1億3000万年前から存在します。ボルネオ島の近隣のフィリピン諸島では、なんと熱帯雨林の90%が失われました。長い年月をかけて生物多様性を育んできた熱帯林を、わずか10年やそこらで破壊することがどうして許されるでしょうか?

このような悲劇の原因は何でしょう?

熱帯林減少の原因

焼畑耕作

原因はすべての熱帯林で共通ではなく、場所によって異なります。

熱帯林を焼き払って畑にする焼畑耕作が熱帯林消失全体の45%を占めています。各場所では南米で35%、アフリカで70%、アジアで49%を占めています。

例えば、世界最大の熱帯林である南米のアマゾンは酸性土で決して農作物がよくできる土壌ではなく、一度焼かれると回復不能な不毛な荒地と化してしまいます。

牧場と家畜用のエサを作る農地づくり

アマゾンの熱帯林減少の大きな原因が牧場と家畜用のエサを作る農地づくりです。牧場の開拓では森を切り開いて牧草地にします。そこに牛を放牧するも土地が痩せてしまい 3 、2年後には新しい牧場のためにさらに切り開く、といったことが繰り返されます。農地に関していうと、家畜のエサやバイオ燃料や人々の食料を得るためにつくられている大豆畑が大きな問題になっています。

肉を食べるために牧場が増やされ、農地が増えているのだから、これは日常的に肉を食べる人には関係することです。肉を食べる量を制限する必要があります。家畜の数を知って驚いたので共有すると、世界全体ではヒツジ・ブタ・牛がそれぞれ10億頭、ニワトリ250億羽以上が飼育されているそうです。

木材調達

もちろんビジネスのための伐採も原因の一つです。木材を調達するために伐採がされています。日本も多くの森林を国内に持つにも関わらず安い熱帯材を大量に輸入していた歴史があります。近年もインドネシアやマレーシアから合板材(ベニヤ板を重ねたもの)を日本へ多く輸出しています。多くの木材を輸入に頼っている一方、日本国内に多く残る森林は整備がおろそかになり劣化し、国外では熱帯林の伐採を引き起こしています。

鉱物採掘

採掘された鉱物は、私たちが普段よく使う身近なものに含まれているので、遠い国で起こっている関係ない出来事ではありません。自動車など様々なところで使われる銅、携帯電話に使われるレアメタルは熱帯林の山を丸ごと切り取る露天掘りという方法で行われます。

パーム油

アブラヤシからつくられるパーム油は、植物から採られる油の中で、世界で最も生産されています。スナック菓子などに使う食用油や石鹸となります。これはオランウータンが住む東南アジアのボルネオ島、スマトラ島などの熱帯林を破壊して作られた、単一植物を大量に栽培する大規模農園(プランテーション)で生産されています。

巨大なダム開発

例えばアマゾンで1989年に建設されたバルビナダムが環境に与えた被害は甚大でした。アマゾンの奥地であるブラジルのマナウス流域に軍事政権時代に建設が命じられ巨額の資金が費やされ、建設されました。

バルビナダム建設でできた人工湖(NATIONAL GEOGRAPHIC より)

このダムによってせき止められた川の水が、手つかずの熱帯林を3129km2 (東京ドーム約67000個分!)飲み込み、3000以上の小さな島にしてしまいました。当然の結果として、このダム湖に住んでいた生き物の多くが姿を消しました。

この出来事は衝撃的な悲劇ですが、多くの人は知りません。そして依然としてアマゾン流域に数百のダム建設が予定されています。

アマゾンのダム建設計画(NATIONAL GEOGRAPHIC 2015.07.10 より)

熱帯林は炭素を所蔵し吸収しており地球を冷やす効果があります。そのため気候変動問題の解決の重要なキーでもあるといえます。さらに人間に食料や薬を提供するという効果もあります。

熱帯林の伐採を中止し、再成長を可能にすることで、2050年までに全世界の純排出量の最大50%を削減することができます。私たちに何ができるのか考えて、今すぐに行動に起こすべきです。とはいえ、何をしたら良いのでしょう?

私たちは熱帯林を守るために何ができるでしょうか?

■植林事業や熱帯林の再生事業に参加しよう

熱帯林まで出向いて植林作業に関わるのは難しいと思いますが、活動している団体に寄付をすることで植林など熱帯林を守る活動に間接的に関わることができます。

日本ではアブラヤシのプランテーション畑の増加などで減少しているインドネシアの熱帯林を保全する団体があります。more trees では植林活動、ボルネオ保全トラストジャパンでは熱帯林の一部を購入して保全しています。

商品の選択に気を付けよう

日本に住んでいるから熱帯林に対して悪いことはしていないと思っていませんか?実は知らず知らずのうちに熱帯林を壊しているかもしれないのです。

例えば・・・パーム油を使っているスナック菓子、露天掘りによって掘り出された自動車などに使われる銅、携帯電話に使われるレアメタル、森を切り開き生産された肉。これらを購入することなどです。 壊さないために気をつけたいことは、普段消費している食品や製品の選択です。

木材を使った商品を購入するときに環境に配慮したものを選択することができます。商品につけられたマークで判断することができ、これは森林認証制度という環境・経済・社会という側面から熱帯林に限らない森林の「適切な管理が行われているか」を評価して認証を与える制度です。世界的に有名なものにはFSCとPEFCがあります。

FSCとPEFCのロゴマーク

このマークがついた製品を買うことは僕らにできる重要な選択だと思います。

一方で認証制度は完璧ではありません。例えば、PEFCの認証を得ているルーマニア材が実は違法伐採により得られた木材が多く含まれているという報道がありました。日本はそのルーマニア材を大量に輸入しているという問題があります。

アグロフォレストリーを用いたコーヒーや蜂蜜などの食品を選択することも良いことだと思います。アグロフォレストリーとは森林農法といい、農業を営みながら森林を再生させていく農法のことです。単一の作物を植えるのではなく、複数の作物を植えます。例えばコショウと果樹を同時に植え、コショウが枯れたときには果物がとれ森林が再生するといった具合です。この方法で農家は結果的に多くの収益を得るし、森林が再生します。

保全地域を増やす

保全地域を増やす方法として、トラスト活動に参加することが考えられます。トラストとはお金を出して自然や伝統を保全する方法です。熱帯林を購入する熱帯林トラスト活動を行っている団体に寄付することで関わることができます。有名な団体には World Land Trust があります。

生物多様性が非常に高く後世に残していくべき熱帯林を保全地域として法律の力で守られるべきだと考えています。

熱帯林だけに限らず、生物多様性が高いが失われつつある地域 4 を保全するために私たちができることについて紹介しているのWWFのサイトはオススメです。

■まだ世界にはないけれど・・・

熱帯林を購入することで守るトラスト活動をもっと簡単にできるような仕組みをつくりたいです。今は各NGOのサイトに移動して、たくさんの情報を読み、色々と入力してようやく寄付できるという複雑なプロセス。それをとっても簡単にしたい。私のオリジナルアイデアではないけれど、例えば、若者になじみのあるスマホアプリをつくるとか。航空券を買うときにオプションとして熱帯林購入を選択できるとか。

この記事を書くにあたって色々と調べましたが、完璧な答えはでていません。今後も熱帯林を未来に残すため何ができるのか、探求を続けていきたいと思っています。

なので皆さんの知っている解決策も、ぜひシェアしてください。いっしょに考えていけたら嬉しいです。

suppie@spiral-club.com

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注釈

1 生存率を20%から80%とするものや、10%から95%に向上させたという記述がありました。

2 熱帯林はたくさんの木があり、たくさんの炭素を貯めています。気候変動を食い止めるためには熱帯林をこれ以上減少させないことが大切です。人の活動により排出されるCO2の6~17%が森林減少によるものです。

3 過放牧と呼ばれ牧草地のキャパシティーを家畜数が超えた状態です。牧草地の再生が追いつかないため、土地が痩せてしまい砂漠化の原因になります。

4 生物多様性ホットスポットといいます。定義は1500種以上の種子植物・シダ類が生息しているが、原生の生態系の7割以上が改変された地域のこと。約19億6000万人が生活しており、多くが地元の自然に頼った生活を送っている。

伊藤 聡士(すっぴー)

伊藤 聡士(すっぴー)

1993年生まれ。夢は環境問題を解決すること。きっかけは小学生の頃、近所の自然が消滅し大好きな昆虫観察ができなくなったこと。大学院ではIPCCの報告に寄与する研究所に所属。東京大学大学院卒。環境学修士。2018年12月Spiral参加。もっと詳しく

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