あなたはどうやって良い先祖になる?

将来の先祖たちが集まって、対話してみた。

2022.03.06 黒坂 陸

黒坂 陸

「おじいちゃんが大切にしていた梅の木があってね。おじいちゃんが大切に世話をして、おばあちゃんが梅の実をシロップにして。私はそれを梅ソーダにしてがぶ飲みしていると、おばあちゃんが『作るの大変なんだからがぶ飲みしないのっ!』って。でもそれはすごく幸せな時間だったんだなって思う。」 Risa

私はこの地球に生まれ落ちて25年と5ヶ月とちょっと。これまでに何を先祖から貰ったのかと考える。
46億歳の地球から、生命の誕生・バクテリアから、人類の祖先であるホモサピエンスから、これまでの人類の先祖から、ひいおばあちゃんから、おじいちゃんから。

2022年2月27日に開催されたSpiral Club open meetingは参加者に問うた。

「Are we being good ancestors?」

将来の先祖が集まる

今回のファシリテーターは最近”正式に”Spiral Clubの運営メンバーになったいさお (多くの人がいさおはメンバーだと勘違いしていたのは巷で有名)。企画者でもある彼はRoman Krznaric著の「The Good Ancestor: A Radical Prescription of Long Term Thinking (和訳: グッド・アンセスター 私たちは「よき先祖」になれるか」)」を読んで思った。

「先祖になることについて語ろう!」

Image by: Moegi

Spiral Clubは、あらゆる社会変革は対話から生まれることを信じて、環境に関する問題を話すきっかけを提案している。
当日、時間になると続々とオンラインミーティングルームに入室する将来の先祖たち。日本細胞農業研究会でインターンをする高校生から、デザイン会社の事務員までその日も幅広い分野から参加者が集まった。

簡単な自己紹介の後 (私はこういう時の自己紹介は4人を越すと人数が多くてほとんど何も入ってこない)、一つ目の質問が投げかけられた。

あなたは次の世代に何を贈りたいですか?

各自ブレイクアウトルームと呼ばれる個別の部屋に、この問いと共に飛ばされた。あなたも考えてほしい、次の世代に何を贈りたいのか。

いろんな考え方ができる。

そもそも、次の世代とはどの世代までを意識するのだろう。もしあなたの子どもができたと仮定したら、彼らの世代はもちろん次の世代になるはずだ。ではその子の子どもは?その子の子どもの子どもは?
対象者も家族や親戚などの血縁や地縁だけなのか、それとも後世代全ての人々に向けて残せるものはあるのか?

あとは「何」を贈るかも大切である。贈る以上、受け取った側が嬉しいと感じるものであることを期待したいが、誰にでもあるようにプレゼントが必ずしも成功するとは限らない。何を贈るかは慎重に選ぶ必要があるのかもしれない。
それは手にとって触れるものなのか、それとも目には見えない概念的なものなのか。

参加者の口からは驚くほど多種多様な言葉が出てくる:身体感覚 (例: 川に飛び込む、メタバース等へのアンチテーゼ)、他者の痛みを感じられる力、参政権・公民権、色という概念、エンタメ、原風景、微生物の設計図、原種のタネ… 。

自分は先祖から何を受け取った?

では、あなたは「先祖」から何を贈ってもらったんだろう。

梅の木を残してもらったその人は、その梅はおじいちゃんのさらにおじいちゃんが亡くなった時から世話をしているとこぼしていた。冒頭の昔の記憶のように梅シロップが作れるほどには梅はもう実らなくなってしまったが、その記憶と今も残る梅の木はパーソナルでポジティブなものかもしれない。

この記事を読んでいるあなたが使っているインターネットという技術も、いわゆる「先祖」によって研究、開発され、現在に至っている。多国籍大企業の台頭の背景や、デジタル依存症などの”副次産物”もさることながら、ソーシャルハッカーによる不正の暴露やアラブの春のように民主化を加速されるツールとしても役立っているのかもしれない。

もっと広く視野を広げて、社会や世代を見たときに私たちがもらったものを考えてみる。今こうして話している言語も、例えば日本という国における治安の良さも、全てはこれまでの先祖・世代が作り上げたり、維持をしたり、抵抗を積み重ねることで勝ち取り、贈ってくれたものなのかもしれない。

一方、”私たちの世代”が受け取ったものには素直に喜べないものもある。気候変動、原子力爆弾、戦争や紛争、プラスチックごみの山… 。先の世代を批判することはあまり良い気がしないのは私だけではないはずだが、この考え方を捨てるのも難しい。なぜなら私たちは過去から学ぶ生き物だと育てられたのだから。
だけど私たちはこの負の遺産を、「今私たちが直面する負の遺産」として認識して、次の世代になるべく残さないようにする努力はできるのではないだろうか。

改めて、あなたは何を贈りたい?

とはいうものの、そんな先の世代のことを想って行動するのは難しいのは一理ある。だからこそ、私たちはオープンミーティングを開いたのだ。参加できなかった人も、この記事を通して自分に問いかけてみたり、課題図書を読んでみてもいいかもしれない。

会の最後に感想をチャットで共有する際、「自分に対して先祖の感覚が湧いた」というコメントを見たがそれはすごい能力な気がしている。なんてったって、先祖の視点をゲットできるからだ。
私自身は先祖になる感覚は湧かない。セクシャリティーも相まり、自分の血縁を残す選択が必然ではないと感じているからかもしれない (同時に、全く関係ない気もする)。だけど、「前の世代に生かされている感じ」は理解できる。前の世代が居なかったら、私は自由に愛を表現することができず、好きな人と手を繋いで路上を歩くことで殴られるという恐怖に常に怯えていたかもしれないから。

「何を残していくか」という問いは、社会に対して変化を起こしたい意志を持つ人にとって、大きくて恐ろしい命題に聞こえることもあるだろう。特にその問題が大きければ大きいほど、「何かを残すことができるのか」という疑問がつきまとうからだ。

そんな気持ちを心の片隅に抱いていた私だったが、いさおは最後に日本語の翻訳者である松本紹圭氏のセミナーの内容から「今できる最善を尽くすこと」と締め括った。確かにそうだ、今できる最善を尽くさなければ。

P.S. 戦争は過去のものである、と心のどこかで思っていた。もちろん、紛争や争いは止んでいない世の中であるが、国と国とを跨ぐ「戦争」はこれまでの歴史からもう起こり得ない、と勝手に期待していた自分がいた。「戦争は過去のものである」という概念を次の世代に贈ることも、私の贈り物リストに追加された。


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黒坂 陸

黒坂 陸

黒坂陸は神奈川生まれ、アイデンティティは広めに首都圏。食べる顔はCMに出てくるレベルで幸せそう。チェコでのキャンプをきっかけにヴィーガンになる。「食」に関連する問題に興味深々。大学では市民社会を軸に社会問題について学ぶ。Spiral Clubを通じて、美味しく環境問題を解決できるような方法を見つけたい!もっと詳しく

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