「物語」の力で環境活動の輪を広げる|SPIRAL BOOK REVIEW

数字やデータで心が伝わるとは、ゆめゆめ思いなさるな。

2019.01.31 田村 聡

田村 聡

「意味は伝わってるんだけど、感情までは伝えられていないな、、、。」

そう思ったことありませんか?

それはとっておきのアイデアを思いついた時のワクワクする気持ちだったり。熱帯雨林が切り倒されて、オラウーターンの住処が失われて悲しくなる気持ちだったり。

「何かを伝えたくて、しかも伝えた上で行動に移してほしくて、精一杯努力はしてるけど、ちょっとうまくいかない。」

そう思うことって、けっこうありますよね。

特に、環境について話している時なんかは、、、。

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■プレゼンすれども、ワクワクが伝わらぬ

先日、私は会社で上司に新たなプロジェクトを提案する機会がありました。

社内資料を使いやすいように、しかも自動的に整理整頓されていくシステムを導入するといったもので、今まで資料を探すのに手間取っていた時間や、資料を見つけられないことで起きていた機会損失をなくせるため、インパクトの大きいプロジェクトです。

私は、その画期的なシステムを思いついた時に、鼻息が荒くなるくらい興奮しました。

とてもワクワクして、これは絶対に実行に移したいと思ったので、私はプレゼン前にしっかりと下準備をすることを忘れませんでした。

・資料を探すのにかかる無駄な時間をタイム計測ツールで測り、どれだけインパクトがあるのかまとめました。
・社員一人一人の時給を概算で出し、その無駄な時間が実際のところどれだけ無駄費用になっているのか算出しました。
・資料がないことで起きているであろう機会損失も羅列してまとめました。
・etc…

これは絶対に上司から承認を得られるであろうと、自信満々で臨んだ上司へのプレゼンは、、、期待とは裏腹にボチボチな結果で終わってしまったのです。

「やってくれて構わないけど、どうだろう、、、。」のような、何か煮え切らないもので、私の頭の中ではサンサンと輝いていたアイデアは、どうにも伝わっていなかったようです。

↑なんか想像していたのとは、違った。。。

「なぜなんだろう。なぜ自分が感じているワクワクが伝わらなかったんだろう?」

と、落ち込みながら考えつつも、実は私には少し思い当たる節がありました。

それはかねてより何度か耳にはしていたことなのですが、実感としてなかったことです。

そしてそれは、なぜかわからないですけど、自分には無関係だと思っていたことです。

でも、自分が素晴らしいなと思ったり、ワクワクが伝わってくるなと思うプレゼンの中には、それが確かに存在しているのです。

それを、なんとか自分のものとして使えるようになりたいと考えた私は、早めに帰宅できた平日の夜、彼女から居候費として渡されていた1万円を財布に忍ばせ、本屋に入りました。

そしてついに、素晴らしいプレゼンには確かに存在している「それ」の正体を教えてくれる一冊の本に出会いました。

「The Storyteller’s Secret(和訳:ビジネスと人を動かす脅威のプレゼン)」

データではなく、ストーリーで人を動かす

人は何か物事を伝えようとするとき、聞き手は数字やデータを聞きたがると勘違いしている人が多いのですが、実際には「感情は論理の上をいく」のだそうです。

つまり、数字やデータを使った説明よりも、背景のストーリーを語ることに時間を費やした方が、相手に感情までも伝わりやすく、聞き手が行動に移してくれやすいのだといいます。

人が物事を理解し、証拠を活用するには、ストーリーが欠かせないとまで言ってる人もいます。

私は、まさにこの反対のことをしていて、上司へのプレゼンの中で、必死に集めたデータばかりを語り、背景のストーリーを全く語っていませんでした。

↑人は語り手のストーリーにこそ惹きこまれる

ストーリーが聞き手に伝わりやすいのは、ストーリーが脳内の化学反応を変化させ、聞き手の共感を呼ぶからでもありますし、人の脳みそがストーリーを受け入れやすい仕組みになっているという理由があります。

というのも、昔の人々は昼間に狩りや採集をして、夜になると火を囲んでストーリーを語り合っていました。ストーリーを通じて、マンモスの捉え方や、毒のある木の実などの情報をシェアしていたのです。

夜に語られるストーリーを覚えられないと、生き残る上で重要な情報や慣習が抜けてしまうので、人の脳みそは自然とストーリー形式の話を受けいれやすい仕組みになっていったのです。

■「レインボーサーぺントの伝説」で実感、ストーリーの力

レインボーサーペント

「レインボーサーぺント(虹色の蛇)の伝説」って知っていますか?

オーストラリアの原住民たちの言い伝えなんですけど、

山より大きくて、ギラギラ光る虹色の皮をもった大蛇が腹痛に苦しみ、怒り狂って人間たちを口から吐き出したことで、今の世界が始まったっていう謎の伝説です。

私は、アボリジニ*の国旗や、空にかかる虹を見ると、なぜかこの蛇の物語を思い出しちゃいます。

けっこうパンチのある言い伝えとはいえ、自分がこの話を聞いてから8年以上経っているのに、覚えているのはやはり物語として聞いていたからかもしれません。

皆さんも、中学校で習った数学の定理は思い出せないけど、小学校の時に聞いた物語は思い出せるのではないでしょうか。

※オーストラリアの原住民の総称

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↑我々の脳はストーリーと相性が良い

■人の感情に訴えるのがストーリー

特に、優れたコミュニケーターは例外なく優れたストーリーを語るのだそうです。ストーリーで物事を伝えて、ストーリーで人を動かします。

本の中では、イーロン・マスクやスティーブ・ジョブズなどのビジネスで大成功を収めた人々や、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師、女性人権活動家のマララ・ユスフザイといった世界を変えるスピーチをした人々の魔力(ストーリーテーリングの技)が紹介され、そのスピーチがなぜ人々を動かしたのかをが紐解かれていきます。

私たちに身近なところでは、パラリンピック女子陸上日本代表の佐藤真海選手のスピーチも東京オリンピック・パラリンピックの周知を決定付けたものとして取りあげられています。

彼女が陸上選手としての人生を歩んでいた17歳の時に、片足を切断しなければならなくなり、そこからいかにして人生に希望を見出し、パラリンピックの選手になったのかというストーリーを語ることで、選定員たちの感情を揺さぶることができたのだといいます。

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↑https://www.youtube.com/watch?v=frLZeeU9760(この動画の5:27~9:30くらいが佐藤真海選手のスピーチです)

■心が躍ることをストーリーの基礎とする

この本を読んで、私は上司へのプレゼンで注力して伝える箇所を変えることにしました。

今までは、プロジェクトがもたらすインパクトや、機能面に焦点を当てていたのですが、それよりも自分がワクワクする箇所や、そのプロジェクトが達成した時にどうなるのかストーリー要素を交じえて伝えるようにしたのです。

例えば、最初のプレゼンでは整理整頓するための構造や仕組みの説明を事細かにしていたのですが、それを止めて「資料を格納することで木が大きく育つんです。」という一言に変えました。(ここだけ聞くとこいつは何を言ってるんだ?となると思いますが、プレゼンの中では意味が通っているのですw)

そして、自分の働いている会社は「中小・ベンチャー企業が咲き誇る国へ」というミッションを掲げています。なので、それと絡めて「中小・ベンチャー企業の花が咲く、ベースとなる木の幹作りをさせてください。」という風に伝えるようにしました。(再掲:ここだけ聞くとこい…..通っているのですw)。

すると、上司もそれを聞いていた同僚もみんな面白がって賛同してくれるようになりました。

そして、プロジェクトへの協力者もすんなり集まるようにもなったのです!

■このストーリーの魔力を環境活動でも:アポッピースの冒険について

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(画像:アポッピース)

私たち、スパイラルクラブは「環境問題について会話するきっかけを作る活動」をしています。でも、私たちはそれだけではありません。

もっともっと皆さんに伝えたいことがあります。

何に問題意識を持ち、どこにゴールを置いて、何をミッションとしているのかなど、私たちのことを皆さんに伝えて、できたら共感してもらい、コミュニティに加わってほしいのです。

だから私たちは、私たちの目的やゴール、ミッション、行っていること、問題意識などを「アポッピースの冒険」という絵本で伝えることにしました。

私が本で学び、仕事で実体験したストーリーの魔力を、環境活動の輪を広げていくのにも使っていこうと考えたのです。

アポッピースが何を感じ、どこで挫折をして、誰と出会い、どこに向かうのか。それを通してSpiral Clubのことを少しでもわかってもらえたらなと思っています。

今まさに、イラストレイターのモエギや愉快な仲間たちと一緒に作っている最中で、完成予定は6月末。

7、8月くらいのオープンミーティングから、使っていけたらなーと思っています。

こうご期待!

■最後に

採点してみたよ!

お〜!とどれだけワクワクしたか:5 / 5
しっかりと根拠に基づいていそうか度合い:4/ 5
一気読み度:3 / 5
エンタメ性:4 / 5
表紙の意識高い系度:5 / 5
友達におすすめするか?:4 / 5
総合ポイント:4 / 5

著者は個人的な体験や逸話、TEDトークなどからたくさんの例を引っ張ってきています。ストーリーテーリングの魔力を感じるだけじゃなく、おおなんて素晴らしいアイデア/人物なんだと、紹介される一つ一つのストーリーを読むのも楽しみの一つ。

しかも本の最後には、本の中で紹介されたアドバイスやテクニックがまとめてあって、すぐみんなが使えるツールボックスのようになっています。

何か伝えたいことがある人、誰かに行動に移して欲しい人には、オススメの一冊です。

storry3

(fin.)

田村 聡

田村 聡

1992年生まれ、東京都羽村市出身。
オーストラリアで環境学を学んだ後、ネット広告代理店にて勤務。
目標とするものは、千の手を持つお地蔵さん。穏やかで優しく、多くを救える人になりたい。もっと詳しく

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