「SEED of HAPPY」何か見つけた?

みんなを幸せにしてくれる「食べ物」「アート」「自然」が大好き!

2019.05.09 尾崎靖(オジャッピー)

尾崎靖(オジャッピー)

出版社で37年7か月、編集者をやってました。

そのうち20年が雑誌の編集。だいたい18年が写真集など単行本の編集です。単行本は、主に自然の写真集をたくさん編集してました。写真家から自然の美しさや環境破壊が進んでいることを教えてもらったりしながら、時にはハワイに夜の虹を一緒に観に行ったりしていました。

写真集の編集はとても楽しいんですが、予算もそう多くなく、プロモーションも自分たちでやらなければなりません。お金がかかります。そこで、もうひとつ社内での仕事を作ろうと、企画書を書いて、自分たちで広告を集めて、雑誌を立ち上げました。食べることが大好きなので食に関する雑誌を考えたのですが、たくさんのグルメ雑誌が先行する中、どんな雑誌にしたらいいかなあ?と悩みました。思い立って、家の台所に並んでいる妻の料理本の著者に電話してみました。

「今、どんな雑誌が必要と思われますか?」

電話口で1時間叱られました。

「あなたは、日本の自給率がいくつか知ってるの?」

「農家の時給はいくらか、知ってるの?」

「地方に眠っている宝のような食材を掘り起こすにはどうしたらいい?」

「舌を喜ばせる食と、細胞を喜ばせる食の違いは?」

「食べることは体にガソリンを入れることじゃなく、細胞そのものを刷新するという、福岡伸一さんの本は読んだ?」

どれひとつ答えられませんでした。そして、最後に、こう言われました。

「あなたに、食の雑誌をやる資格はありません!」

翌々日、菓子折りを持って、その料理研究家を訪ね、わからなかったことをすべて教えてもらいました。そして、それをテーマに雑誌を立ち上げました。

そんなふうにして雑誌を作っているうちに、人づてに単行本の企画をいただくようになりました。オーガニック料理の母と呼ばれるアリス・ウォータースさんの「アート オブ シンプルフード」もその1冊です。分厚いその本を開いた時、9つのプリンシパルが目に入り、本にしたいと思いました。その9つは、雑誌を作るときにお世話になった料理研究家が言っていたことと全く同じでした。ちょっと長いけど、ご紹介します。

1.地元で持続可能的に作られた食材を食べましょう。
2.旬のものを食べましょう。
3.ファーマーズ・マーケットで買い物しましょう。
4.庭に食べられるものを植えましょう。
5.ものを大事にし、堆肥をつくり、そして、リサイクルに努めましょう。
6.シンプルに料理しましょう。
7.みんなで一緒に料理しましょう。
8.みんなで一緒に食べましょう。
9.食べ物は尊いということを忘れずに。

なんとか『アート オブ シンプルフード』はできたものの、4200円もする文字だけのオーガニックレシピ本が簡単に売れるとは、2012年当時でも考えられません。見本を持って書店の方に説明して回ったり、オーガニック食材店に売り込みに行ったり、あと、知り合いのシェフたちにお店に置いてもらえるようお願いしました。料理教室を開いているシェフには生徒さんに販売してもらったり。清澄白河の「山食堂」はできたばかりのお店でしたが、お店の料理にこの本のレシピを使ってくれました。デザイナーのヨーガン・レールさんのお気に入りでもある素晴らしいお店のカウンターに、たくさん付箋のついた『アート オブ シンプルフード』が置いてあるのを見た時は、もう感動。たった1冊の本を作って届けることで、気の合う友達がたくさんできるなんて考えてもいなかったので、何がどうつながるのかわからないのがオーガニックの良さなんだなあ、と思ったりしました。

アリスと娘のファニー、二郎さん、アリスの友人ナンシーと一緒に@すきやばし次郎

その後、NHKでアリスさんの番組をON AIRしてDVDを作っていただいたり、自分たちでビジュアルブックを作ったりしました。『アート オブ シンプルフード』のプロモーションを兼ねた取材で初めてアリスさんに会った時、インタビューの最後に「大切にしていることはなんですか?」と質問したときのことが忘れられません。返ってきたのは「Sense of Land」という言葉でした。意味がわからず「?」という顔をしていると、アリスさんは、「Shindo-Fuji」と言い直してくれましたが、その言葉がますますわからない。

帰りの飛行機の中で、それは日本語で「身土不二」という言葉だった、と思い当たりました。自然農法で有名な福岡正信さんが常々言っていた言葉です。料理研究家の方からも聞いた言葉でした。「身土不二の感覚を子供のころから育むことが大切だ」とアリスさんも料理研究家も考えて、実際に活動されていました。

水中写真家の古見きゅうさんと写真展会場にて。

そんなわけで、写真家たちからは自然の美しさと大切さを教わり、食を通して身体と自然の関係を考えるようになりました。会社を卒業した今でも、そのテーマは変わらず、「食べ物と美しい自然は、人を幸せにしてくれるHAPPYの大元みたいだなあ」と思いながら、今も変わらずに食や写真の仕事をしています。

「SPIRAL CLUB」でやってみたいのは、「Seed of Happy(幸せのタネ)を見つけて、みんなでシェアすること。いろんな問題はあるけれど、怒ったり反対しているだけでは何も変わらない。だったら、小さくてもいいから、何か解決につながることを実践している人や本やプロジェクトを紹介して、その小さなタネをみんなで育てていければなあ、と思っています。
テーマ的には、未来が明るくなる食べ物や本などの情報を通じて、心と身体や地球の環境のすべてが良くなって行くようなことを探していきたいと思います。もちろん、みんなからのHappy Seedも大歓迎!
スパイラルではオジャピーと呼ばれています。 どうぞよろしくお願いします。

自然写真家の高砂淳二さんと山伏体験

尾崎靖(オジャッピー)

尾崎靖(オジャッピー)

エディトリアル・ディレクター。小学館在職中に雑誌『美味サライ』『旅サライ』を創刊。『アートオブシンプルフード』、『鮨 すきやばし次郎』などの書籍や、高砂淳二氏はじめ多くの自然写真家のビジュアルブックを編集。現在は、書籍などの編集のほか、写真編集講座の講師、食と健康に関するウェブサイトのキュレーションも行う。もっと詳しく

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