サメを追いかけて、Shark Marketへ!

怖くないと言ったら嘘になる。でもアナタに、愛を送ります。

2019.01.31 松岡 美範

松岡 美範

ツンとした臭いが鼻の奥を刺激し、目の表面がひりひりする。
明らかにこの場所だけ異質な臭いが漂っている。
目の前に広がるのは、たくさんの四角い塊。血にまみれた灰色と白っぽい、塊。

働く人々は裸足か長靴でその上をまたいで歩く。塊のうちいくつかは運ばれたり、捨てられたりしている。

私はなんでここに来たんだっけ。
何をしに来たんだっけ。

サメの皮が天日干しにされていた。

今日はシャークマーケットで考えたことを伝えるから、 一緒にサメの世界をのぞいてみようよ。

<シャークマーケットに行った経緯>

ここは漁師によって水揚げされた、サメやエイを取り扱うシャークマーケット。
場所は、インドネシアのロンボク島。この島にはサーファーやダイバーがポイントに集まるくらいで、他はすべて村。


旅の途中に、ど田舎のこの場所にどうしても来たかった理由がある。
2019年、2月のある日。
インスタグラムでたどり着いた、一枚の写真。

マディソンのInstagram

1人の女性が、サメのヒレを胸に抱え、悲しげな表情をしている。
水揚げされたサメは、水分を失ったしわくちゃな顔でカメラレンズを見ている。
「かわいそう」
「こんなにサメって獲れるの?獲っていいものなの?」
「何のためにサメ獲っているのかな?」
と衝撃が頭の中をめぐった。
そしてその思いは、自分の目で見たいという気持ちに変わり、3月に私はロンボク島に降り立った。

シャークマーケットの話の前に、もう少しサメの基礎知識を。

<サメのイメージ>

記事の執筆にあたって、サメについてのイメージを周りの人に聞いてみた。

友人1:
本物は怖いけどイラストはかわいい、海の中で一番強いのがサメでしょ?

友人2:
なんでも食べちゃう。「ジョーズ」のイメージ。
人間は食べられちゃうけど、私たちが食べたらまずそう。というか、食べるの?

友人3:
危険、怖い。サーファーが襲われている。
海に遊びに行くときは頭をよぎるから、あまり深いところはいきたくない。

さとし(スパイラルメンバー):
サメって雄大な生き物だから、クジラのように愛されて良いのにねー。

友人1~3は、環境や動物というワードにあまり馴染みがない。三人が共通して持つイメージは、サメは怖いということ。
スパイルメンバーのさとしだけ、動物に対する愛情が見えて、にやにやした。

こんな顔で微笑まれたら、いくらなんでもびびっちゃう。

でも本当にサメは怖いだけの生き物なのか?
この記事の結論から言うと、サメは怖いだけの生き物じゃなかった!
あなたはどれだけ知ってる?サメの正体。サメの問題。

<あなたのシャーキビリティ、どれぐらい?>

サメのことを調べていたら、こんな本に出会った。

”シャークジャーナリスト”の肩書を持つ沼口麻子さんの本。

日本、世界で様々なサメに出会い、その生態の面白さや、サメについてまわる「怖い」イメージを払拭するために、いろんな角度からサメの魅力について広めている沼口さん。本を読んでいるだけで、彼女のサメに対する愛情が伝わってきます。「シャーキビリティ(サメに対する知識や意識)」をあげよう!と独自の造語で多くの人をサメの世界に引き込む姿がかっこいい!そんな沼口さんも、「(人を好んで食べる)人食いザメはいない!」と断言しています。この本を読めば、あなたのシャーキビリティはかなりのレベルなものになるはず。

<一番小さなサメは、20cm?>

サメは全世界で509種類確認されていて、その大きさは様々。
世界最小は20センチ程の、手の平サイズのツラナガコビトザメ。最大は17メートルにもなるジンベエザメまでいます。この500を超えるサメの種類でも、人間を「食べ物」とするサメは一種類もいない。
プランクトンや魚を食べる種類もいれば、あごの形によっては、サザエなど殻ごと丸かじりして中身だけ食べる種類もいる。アザラシやウミガメも時として食べる。イメージされやすい怖いサメって、ごく一部の種類に過ぎないのかもしれない。

全長9mにも及ぶウバザメ。世界で2番目に大きいサメ。大きな口で食べられてしまいそうだけど、主食はなんとプランクトン。海の中でウバザメにあっても、食べられないから安心して!(いつもは深海にいるから会えたら相当ラッキー!?)

<ベストフレンドは、人間のダイバー?>

一時期(私のタイムラインで)ニュースになっていたこちらのダイバー。
横で微笑んで(?)いるのは、なんとネコザメ。そう、このネコザメはこのダイバーにメロメロだというのです。

リックのInstagram

ネコザメと戯れるのは、ダイビングインストラクターのリック・アンダーソン。
7年前に出会ったこのネコザメ、彼がある時そっと近づいて撫でた時から二人(一人と一匹?)の間に絆が生まれたのだとか。
以来リックがあるポイントに行くと、必ずこのネコザメが自ら近づいて来て、撫でさせてくれるという。もちろんこのような不思議な絆は特別なものですが、人間とサメも仲良くなれることを世界中に見せてくれているような気がします。

※ダイビング中に生き物にむやみに触れることはお勧めしません。

携帯のバグじゃありません。ちょっと根気よくスクロールしてください。どんどんしてください。↓↓

参考ページはコチラ

ここまでスクロールしてくれて、ありがとうございました。画像の最初と最後の部分を読んだ方はもう気づいたと思いますが、冒頭に描かれていたのは、「1年にサメに殺された人」。残りの赤のサメたちは「1時間に人間により殺されたサメ」を表しています。なんとも強烈なイメージですね。
もう次のタイトルの答えの予想が着きそうですが…

<サメと人間、どちらが殺し屋?>

サメが人間を襲ったニュースが、しばしば報道されることがあります。

でもこれはサメが人間を「わざわざ食べたくて」行った行動ではないそう。海面を見上げるサメには、ボードに乗ったサーファーがカメやアザラシなど捕食対象の生き物に見えるのだそう。
またサメは生き物の筋肉に流れる、微量な電流を感じとり認識しています。あんまりよく獲物を見ないままかじりついて、もしエサじゃないと分かったらはき出す習性があることも分かっています。このような事実と被害者が確率的に遭遇するとき、事故が起きています。

世界では、年に平均で100件前後のシャークアタックが確認されています。でもこれは、サメが一方的に人間を攻撃した件数ではありません。この件数の中には、「人間が自ら近づいたことによって」起きた事故も含まれています。

サメを見たら、むやみに近づかない。海は彼らのテリトリー。
当たり前だけど今一度思い出さないといけないことだと思います。

サメに襲われ命を落とす確立は、37480678分の1。
雷が落ちて死ぬ確立は約8000分の1。サメにかじられて死ぬよりも、雷が落ちて死ぬことを心配したほうがいいのかも。2018年には、世界で130件のシャークアタックが報告されていますが、死亡件数はそのうちの4件でした。

それでは、人間に殺されるサメの数はどうでしょう。

サメも他の生物同様、海の汚染、放置された漁網に絡まるなど、サメも人間活動による様々な影響を受けています。
その中でも最もサメを減らす原因となっているのは「乱獲」。乱獲により世界のサメの生息数は9割減少していると言われています。
ある調査では年に一億頭のサメが殺されているという調査報告がありますが、実のところもっと殺されているのではないかと考えられてます(その原因として考えられるシャークフィニングについては後で)。

また妊娠期間が1年を超えたり、(!)一度に子供を生む数が少ないため、一度数が減ると増えるまでに時間がかかるという事実があります。繁殖に時間がかかる生き物を私たちが獲り続けたら…答えは明白です。

<生態系のバランスを保つサメ>

サメは「食べること」を通じて、海の中の生き物の数を一定に保つ役割があると言われています。特定の種類が増えすぎたりしないようにコントロールしていて、海の生態系の中で重要な役割を果たしています。

またサメが減ると肉食性の魚が増え、サンゴに付着する藻等を食べて生きる魚がどんどん食べられます。サンゴについた藻を食べる魚がいなくなると、今度はサンゴも生きづらくなり、最悪の場合光を受けられず死んでしまうことも…全く関係ないように見える生き物も、実はつながっていることがあります。

(サンゴの生態については、この記事でも話しているよ!↓↓)



またサメ好きのダイバーが集まるパラオやオーストラリアでは、大事な観光資源にもなっているのです。実際に観光資源となっているサメは、 ヒレや肉を販売した1回だけの価値よりもはるかに大きな経済 価値を生み出すことが分かっています。

<たどり着いたのは命の頂き方>

私がパラオに行った時のこと。

ガイドがふと言ってたこと今でもよく覚えているのは、話の光景が頭に焼きついていたからかもしれない。

「パラオはサメの聖地。サンクチュアリー(保護区)として設定されている海域がありますよ。みんなサメが怖いというけれど、僕はそうは思いません。人間を襲った事例は年に何件かあるけれど、人間がサメのヒレの為だけに殺している数は何万トンにもなる…フカヒレスープのためにね。
漁師はサメの身体の部分は重いし売れないからと言って、ヒレだけ切り落としてあとは海に捨てるんだ。」

ヒレだけ取って、身体は捨てる。この行為はシャークフィニングと呼ばれる。
この話を聞いた時、ただ単純にひどいと思った。
(youtubeで探すと、このような動画は沢山出てきます)
フカヒレは、ご存知の通り高級食材。
対してサメ肉の市場価値は高くないため、高く売れるヒレだけ持ち帰り売ろうとする人々がいる。
その結果、シャークフィニングが行われている。

シャークフィニングについて調べる中で、
ひどい、とか怒りの感情が出た理由を今回考えたけど、「命を頂く」という姿勢がなかったからだなということがこの記事を書く中ではっきり分かった。

ヒレを切り落とされ、海に捨てられるサメ。
心臓はまだ脈打っているけれど、
泳ぐことも魚を追いかけることも、もうない。
海底にゆらゆらと沈んでゆき
岩や砂の上にただ横たわり、死を待つだけ。
これが命の頂き方のあるべき姿なのだろうか。
捨てられたサメの姿は、決して人間の目に、
特に消費者の目に映ることはない。

フカヒレの消費を減らすことでシャークフィニングに対抗する動きもあります。環境保護団体であるWildAidは、ヒレを失ったサメのビジュアルを用いて、広告動画を作成しています。

WildAidは中国、香港、台湾、タイに向けて、サメの消費を減らすための消費者・供給者に向けてキャンペーン活動を行っています。The Shark Pledgeの賛同の輪を広げたり、意識調査を行っています。

2016年の調査では、中国国内のふかひれスープの消費が80%落ち、調査対象者の93%が、過去6年間フカヒレを消費していないという結果が出ています。

更に詳しくはコチラから。 写真はp.25より。

ロンボク島でも同じことが起きていると思っていたら、少し私の想像とは違いました。

切り身になったサメの体。
食べているのか!という衝撃。

サメヒレの取引は、ワシントン条約(p.91~)によりサメの種類などが制限されています。、航空会社によってはヒレの輸送制限をかけたり、世界中でシャークフィニングに対する措置を設ける傾向もあります。

しかし輸出の際にすべての中身まで調べることはできないので、ラベルの名前を書き替えられていたら、見つけることはかなり難しい。

私は、シャークフィニングには反対です。
海底でヒレを失ったサメがごろごろと波に揺られている様子。
フカヒレスープが好きな人でも、
そんな光景に加担したくない人はいるんじゃないかと思います。
私はサメを殺してないから、関係ない?そんな声も聞こえてきそうだけれど、
食べない、飲まない、その選択をすることが、最終的に「獲る」のをやめることになると思うのです。

何がそんなに珍しいの?と言いたげにサメ皮をまたいでいく学校帰りの少年たち。

ただサメ漁がすべて悪いというわけでは全くありません。

サメの「体の丸ごと利用」には賛成です。サメ肉、軟骨や油まで全て使う地域もあったりと、利用のされ方は様々。(日本でもスーパーにサメ肉がおいてあるところがあるとか。昭和30~40年の築地市場は、サメで一杯で、ヒレ以外ははんぺんやかまぼこに使われていたそう。)
サメの持続性を保ちながら、様々な部位を食べていくことが出来たなら、どんなにいいでしょうか。

<!参考>

海の生き物の持続性を保つ漁業から取られた食べ物や、加工品は以下のような「認証制度マーク」で簡単に見分けることが出来ます。

<シャークマーケットは、おさかな市場?>

インドネシアの人がみんなサメを食べるかというとそんなことはなく、

バリ人1 「サメ?サメなんか食べないさ!」

バリ人2「サメを食べる人もいるよ。バナナの葉で巻いて蒸して、ピリ辛のピーナッツソースをかけるんだ。」

ロンボク人1「サメ、食べるよ。サテ(インドネシア料理。串焼き様なもの。)みたいにして。」

ロンボク人2「食べる。それより切り身買っていく?」

ロンボク人3「サメは食べたことないけど、網にかかって死んでしまったジュゴンなら食べたことある」(!)

…と反応は様々。自然の恩恵を最大限に受けて、いろんなものを食べているようだった。話を聞いているうちにシャークマーケットは地元の人にとっての「おさかな市場」なのかもしれないと思うようになった。中国の市場に出せば高く売れるからね、と中国市場との関係について話す人もいた。

サメをさばく男性。このあと「買うか?」と聞かれた。

訪れた市場の壁には、「we are committed to stop catching protected species of sharks and rays(私たちは、保護種の捕獲しないことを宣言します)」と書かれていた。
インドネシア政府も、種類によっては捕獲を規制を行っている。しかし、ロンボク島まで政府の監視の目が及んでいるかは不確か。
インドネシアではサメヒレ以外にも利用しているということが分かったけれど、だからと言ってシャークフィニングが行われているか否かまでは分からない。
でも自分の手足を使ってここまで来たことは、少なくとも私にとって意味があった。私はロンボク島に、私が考えたいことを見に来た。見て、考えた。

サメに思いを巡らせていた時、あることを思い出した。それは、フィリピンのある小さな小さな島でのこと。
夜の漁が終わり、浅瀬に浸かりながらドーム状の星空を見上げていた時のこと。漁師たちにふと、「夜の漁や深く潜る時サメに出合ったら、怖くないの?」と聞くと、若い漁師がこう答えました。

“No. If you are afraid of him, he will sense you.”(怖がることは、自分がどこにいるかを伝えるようなものだよ。)

無心で海水と一体になれば、サメには見つからないのか…でもこの言葉から、サメと海に生きる人々との向き合い方を、少しだけ見せてもらった気がします。

<STOP!シャークフィニング>

ロンボク島に向かうきっかけとなったinstagramの写真の女性、マディソンは現在「project hiu(プロジェクト ヒウ)」に取り組んでいる。Hiuは、インドネシア語でサメという意味。このプロジェクトは参加者を募り、ツアーを行っている。
ツアーでは、ロンボク島での海のアクティビティに参加しながら、シャークマーケットについて学べる。目的は、「漁師のオルタナティブな収入を創造して、保全活動に取り組む」というもの。

つまりマディソンの目的はこうです。
①サメ漁における問題は、漁師の収入源がサメのヒレにあるから。
 そこをなんとかしよう!

②別の収入源として観光業を提案、サメや生態系に関する学習を広める。
※漁で出す船をシュノーケル船として使用、ガイドも務める

③観光業で安定した収入が入ると、サメ漁に行かずにすむ

④周辺海域でサメの生態系が守られる、環境教育がコミュニティ内外に広がる!

彼女の取り組みで興味深いのはサメをとる人が敵なのではない、と話していること。

漁師やサメを扱う人々を悪く見せたり、地元の人達が、マーケット見学者に対して悪いイメージを持たせないことを大事にしている。それは彼女が発信する動画や、写真でもそれは同じ。特にこの言葉には、覚悟を感じずにはいられなかった。

「漁師たちもまた、私たちと同じように家族に食べさせようとしているだけ。」

この地域に住む人はムスリムで、ササック語を話した。微笑みながらあいさつすると、笑顔を返してくれた。


問題にかかわる人をただ否定しているのではない。問題の原因となる部分を解きほぐそうとしている。私の目には、マディソンの取り組みがそう映りました。
漁師やその家族の生活を知り、自分がどのようにアプローチできるかを考える。そんな姿勢が、プロジェクトに参加する漁師と彼女の関係性を築いているように思います。

<おわりに>

サメについて、今日初めて知ることはどれくらいあったでしょうか。

ロンボク島で私がみたことはきっと、もっともっと色んな地域で起こっていることでしょう。


怖い、嫌いと思っていたものも、ちゃんと知れば本当は愛を送りたくなる存在だったりして。
怖くないと言ったらウソになる、だけど遠くからでも大事にしたいサメについての話でした。

・マディソンのツアーについてのぺージ

松岡 美範

松岡 美範

松岡美範。国内外でウミガメ、サンゴ礁、イルカなどの海洋保全活動に参加。夢は鯨類と泳ぎ、オサガメと出会うこと。今後学びたい事は、クジラのソングやヒートコーラル、海に関する神話と、科学の親和性。知識・感情共に豊かな海洋ジャーナリストを目指す。もっと詳しく

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